復興へと歩みを進める福島の今の姿を学び国内外へ発信しようと、世界3大ミスコンテストのひとつ、ミス・ワールドのファイナリスト達が一泊二日で福島県の浜通り地方を訪れました。
この取り組みは3、4年前から実施されていて、今年は前日に記者会見でお披露目されたばかりのミス・ワールド2024日本代表選考のファイナリストの21名と、ミス・ワールド2023日本代表ら5名が東京をはじめとする全国各地から参加しました。

1日目は双葉町の東日本大震災伝承館や廃炉資料館、福島第一原発を視察し、原発事故について学びました。

「福島といえば、私が小学生の時に起きた東日本大震災のイメージがとても大きかったけれど、実際に来てみたら思っていたよりも復興が進んでいるなと感じました」
そう話すのは、菅野ナナミさん(25)。鬼滅の刃のキャラクター・胡蝶しのぶのモノマネがSNSで話題となり、現在は合計20万人のフォロワーがいるモデル兼インフルエンサーです。



福島県のハワイアンズや猪苗代湖には遊びに行ったことがあるものの、こうして実際に被災地を訪れるのは初めてだということです。
今回がファイナリストになってから初めての活動ですが、既に今まで知ることがなかった新しい世界を知る機会が多く、この学びを活かして世界に貢献していきたいと話します。

2日目はまず福島県富岡町の常磐線が通るJR夜ノ森駅へ。震災前はツツジの名所として知られており、「花と緑の駅」コンクールで日本一に輝いたこともある場所です。

しかし、東日本大震災に伴う原発事故の影響で2011年から営業を停止。駅のシンボルでもあったツツジも、除染のため伐採されました。

2020年の営業再開以降、夜ノ森駅をもう一度花で彩ろうと、さまざまな美化活動が行われてきました。



ミス・ワールドのファイナリスト達も、ベゴニアやラベンダー、サルビアなどの色とりどりの花を夜ノ森駅前の花壇に植栽することになりました。
暑い日差しの中、一生懸命に土を掘り、丁寧に花を植えていくファイナリスト達。

普段は教育系のNPO法人に勤務している田中香穂さんは、「最初に来た時は花も植っていなくて、土の状態だったけれど、いまこうして花が植えられていって、半年、一年後にここで成長していくと思うととても楽しみです。ぜひ福島のひとつの魅力としてこの花壇が育っていってくれたら嬉しいです。」と話します。

また、ミス・ワールド2023日本代表の根岸茉矢さんは、「このお花を富岡町に訪れた人にみてもらうことで、富岡町がさらに復興に向けて歩みを進め、この花壇をみた人たちが明るい気持ちになってくれたらうれしいなと思います。」と話します。



根岸さんは、今年の4月から富岡町の親善大使にも任命されています。親善大使としての活動を通して、出会った人たちの”町をもっとよくしていこう”と奮闘するそのエネルギーに深く感銘を受けたそうです。
これからも、富岡町の魅力や現状を前向きに発信していきたいと意気込んでいました。

その後、2023年に双葉町に新たにできた浅野撚糸を訪れました。高機能で人気のタオル「エアーかおる」の製造工程を見学し、その高い技術力に驚いていました。



また、浅野撚糸に展示されているグランドピアノと共にミス・ワールド2016、2017でタレント部門1位の木村友香さんが「花は咲く」を歌いました。このグランドピアノは、旧双葉町立双葉中学校の音楽室に震災当時のまま取り残されていたもので、12年ぶりに復活しました。ファイナリスト達は震災後に被災地が歩んできた道のりを思い浮かべながら貴重な音色を堪能し、中には涙する人もいました。

浅野撚糸を見学した後は、2022年にオープンした富岡町の富憩荘（とけいそう）へ。富岡町産パッションフルーツの収穫体験を行いました。



パッションフルーツときくと南国のイメージがありますが、実は富岡町でも作っています。富岡町の解体・土木業のサン・クリーンが復興のため、特産品を作ろうと栽培を始めました。



栽培はすべて手作業。受粉もひとつひとつ人の手で行います。
ファイナリスト達はパッションフルーツを試食し、「甘酸っぱくておいしい」「意外とパリパリと音がする…！」と笑顔で話していました。



福島県いわき市出身の新川みさきさんは、今回のツアーを振り返り、「福島出身ですが、この町には来たことがありませんでした。こうして被災地のさまざまな面を実際に自分の目で見ることができてよかったです。」と話します。



新川さんは、現在、東京で美容関係の会社役員をしています。「今年の3月に父が亡くなり肩を落としていたけれど、たくさんの人に勇気や夢を与える仕事をしていた父の姿を思い出し、自分もそういう人になりたいと思って今回ミス・ワールドに挑戦することにしました。父は福島の復興にも力を入れていました。私もミス・ワールドの活動を通して、少しでも福島の復興に携わることができればと考えています。」と話しています。

ミス・ワールドのコンセプトは"Beauty with a purpose(目的のある美)"
ファイナリストたちがみた福島の今が、どんなふうに発信されていくのか、ぜひ注目していきたいですね。